親指と手首（手関節）を繋いでいる①短母指伸筋腱・②長母指外転筋腱、その2本の腱を包むトンネルのような③腱鞘（けんしょう）が炎症を起こしている状態です。

＊ 手の使いすぎ

　親指を使いすぎることで、親指を伸ばす働きをする(短母指伸筋腱)と広げる働きをする(長母指外転筋腱)と、この2つの腱を包むトンネルの腱鞘が擦れて炎症を起こします。２つの腱は傷つき腫れて太くなり、腱鞘も腫れて分厚くなっていき、腱の通るスペースが狭くなります。そのため、腱が腱鞘の中を移動するたびに、腱と腱鞘が擦れて炎症が広がり、手首に腫れや痛みが発生します。

　この事から、ドケルバン病は「狭窄性腱鞘炎」とも呼ばれています。

　最近では、長時間スマートフォンを使う人たちがなりやすい事から、「スマホ腱鞘炎」という別名も付けられています。

＊ 女性ホルモンのバランスが崩れる。(プロゲステロンの増加、エストロゲンの減少)

　ドケルバン病は主に女性に多い疾患といわれています。

　女性は、妊娠・出産時期(20〜30代)と更年期の時期(50〜60代)に女性ホルモンが変動します。女性ホルモンのバランスが崩れる事で腱鞘や腱・関節に悪影響を与えてしまいます。

・妊娠・出産時期(20〜30代)

　「プロゲステロン」という、妊娠の維持に必要なホルモンが通常期よりも多く分泌されています。

　このプロゲステロンには、“筋肉や靭帯(腱鞘)を収縮させる”という作用も持っているため、腱の滑りを悪くしてしまい負担をかけることで炎症を起こす原因になります。

・更年期の時期(50〜60代)

　「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が閉経に伴い、減少していきます。

　エストロゲンは、女性らしい体つきを作る、髪や肌の潤いを保つ働きだけでなく、腱や関節を柔軟に保つという作用を持っています。減少することで腱や腱鞘の動きを悪くして炎症を起こす原因になります。

・親指を動かしたり（特に広げる、伸ばす）力を入れたりすると、手首(親指側)が痛くなる。

・手首(親指側)あたりが腫れる

【ドケルバン病を発症しやすい人】

・男女比は、圧倒的に“女性”が多いです。

・料理人・美容師など、指（特に親指）や手首を酷使する人

・仕事でパソコンのキーボード操作をよくする人

・スマートフォンの操作を片手で行っている人

　ドケルバン病の治療で一番大事なことは、患部の安静です。

　痛みが酷い場合や腫れが出ている場合は、サポーターなどで固定をします。（出来るだけ 手首や親指を休ませて下さい。）

　また、電気治療・温熱治療やマッサージ・鍼灸治療などを行い患部にかかる負担を減らし、湿布や塗り薬などで炎症を抑えていきます。