手をよく使う人に多い疾患で、指を曲げた時の痛みや症状が進行すると指を曲げた後に伸びなくなります。

曲がった指を無理に伸ばす時に、バネのように跳ねて戻る(弾発現象)ことから、ばね指(弾発指)または、snapping fingerと呼ばれています。

【弾発現象のメカニズム】

手指には、指を曲げるための屈筋腱とその腱の運動を円滑にする滑車のような役割をする滑膜性腱鞘とそれを固定する靭帯性腱鞘という組織があります。

屈筋腱が腱鞘というトンネルの中を移動することで、指の曲げ伸ばし運動を円滑に行なっています。

指の使い過ぎなどで、指の腱鞘に炎症（腱鞘炎）が起きて、腱鞘(滑膜性)が腫れて厚くなり、その中を通る屈筋腱の滑走性が悪くなります。

また、腱鞘内を通過する際に摩擦が生じるようになり屈筋腱にも炎症が起きて肥大化します。

そのため、腱鞘内を通過する際に引っかかりが生じるようになります。これが、指が曲がったまま伸びにくい症状の原因です。

炎症が進行すると、引っかかりが強くなります。曲がった指を戻そうとして、無理に強い力をかけると、肥厚した腱の引っかかりが外れて腱鞘を通過する瞬間、カクッと跳ねるように指が伸びます。この現象が弾発現象です。

指の使い過ぎで、指に腱鞘炎が起きて、腱鞘内を通る屈筋腱の滑走性が悪くなり、引っかかりが起きている状態なので、日常的に手指をよく使う人に起こります。

他にもホルモンバランスの関係で女性に起こりやすく、持病に糖尿病や関節リウマチや透析治療中の患者の併発症として起こる場合もあります。

［ばね指になりやすい人］

・長時間パソコンのキーボードやマウスの操作

・ゴルフ、テニスなどの手を使うスポーツ

・ピアノなどの指を酷使する楽器の演奏

・スマホ、ゲーム機などの長時間使用

・高齢になり筋肉が衰える

・女性

・他の病気に併発して起きる（糖尿病、関節リウマチ、透析治療中の患者。複数の指に起きる事が多い。）

［なぜ女性に多いのか！？］

女性は、妊娠・出産時期(20〜30代)と更年期の時期(50〜60代)に女性ホルモンが変動します。

女性ホルモンのバランスが崩れる事で腱鞘や腱・関節に悪影響を与えてしまいます。

・妊娠・出産時期(20〜30代)

「プロゲステロン」という、妊娠の維持に必要なホルモンが通常期よりも多く分泌されています。

このプロゲステロンには、“筋肉や靭帯(腱鞘)を収縮させる”という作用も持っているため、腱の滑りを悪くしてしまい負担をかけることで炎症を起こす原因になります。

・更年期の時期(50〜60代)

「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が閉経に伴い、減少していきます。エストロゲンは、腱や関節を柔軟に保つという作用を持っています。

エストロゲンが減少することで腱や腱鞘の動きを悪くして炎症を起こす原因になります。

・指の付け根を押すと痛む。(手のひら側)

・指の曲げ伸ばす時に指が引っかかる。

・指を曲げたら伸びない。

・指に腫脹や熱感を生じる

・起床時に症状が強く見られる（特に親指、中指、薬指の順に多く見られる。）

ばね指の治療は、指の可動を良くし、痛みを抑える治療が基本となります。

①安静を保つ

基本的に使い過ぎによる炎症が原因のため安静にして患部を休ませる。状態に応じて、サポーター、テーピングなどで関節を固定する場合もあります。

②消炎

痛みが出ている間は、アイシングを行い患部の炎症を抑える。

③筋肉の柔軟性を良くする

指を曲げる筋肉(浅指屈筋および深指屈筋、長母指屈筋)を中心に鍼治療、電気治療、マッサージやストレッチを行い、指の可動性を良くして、血液循環の改善や患部のストレスを減らします。

④骨盤調整

骨盤に歪みがある場合は、不良姿勢や骨盤の歪みにより、背骨のアライメント(並び)が崩れ、肩甲骨の位置異常にもつながります。肩甲骨の位置に異常が出ると、肩、腕、指と連鎖して運動に悪影響がでてしまいます。

そのため、骨盤調整で背骨のアライメントを整え、姿勢を改善することで根本的に患部への負担を減らします。

※注意点！　筋緊張が続くと静脈が萎縮して、緊張物質や老廃物の回収が上手くいかなくなり、治りが遅くなります。

【ばね指を早く治すための栄養療法】

ばね指の治療で最も意識されていないのが、栄養管理です。腱や腱鞘の構成要素にはコラーゲン(線維状タンパク質またはファイバープロテイン)が大部分を占めています。これが腱や腱鞘の強さや柔軟性、潤滑性に関与しています。しかし、コラーゲンの体内合成は、20歳から減少していきます。ばね指や腱鞘炎が治りにくい要因の一つとされています。

そのため、コラーゲンを意識的に摂取する事で、ばね指の治りが早くなる場合があります。

『コラーゲンを豊富に含む食品』

・動物性食品

豚足、鶏の皮、手羽先、軟骨、牛スジ、牛テール、豚バラ肉など。

・海洋性食品

スッポン、フカヒレ、エイヒレ、魚の皮、うなぎ、なまこ、カレイ、エビ、くらげなど。

・その他の食材

ゼラチン、ゼリー、プリン、杏仁豆腐など。

※コラーゲンを豊富に含む食品には高カロリーのものが多いので食べ過ぎにも注意が必要です！